映画パンフレット(東宝･A4) ＤＶＤ
題 名：
植村直己物語
製作国：日本
製作年：1986年(S61)
製 作：電通、毎日放送
配 給：東宝
スタッフ
監督：佐藤純彌
企画：入江雄三、 北野栄三
製作：田中壽一、 高橋治之、 高山 裕
プロデューサー：水谷和彦
原作：植村直己（文芸春秋 刊）他
脚本：岩間芳樹
企画：宮内正喜
撮影：並木宏之
音楽監督：村井邦彦
音楽：ウインダム・ヒル
出演者
西田敏行、 倍賞千恵子、 大滝秀治、 丹阿弥谷津子、 井川比佐志、
山岡久乃、 左 とん平、 古尾谷雅人、 藤木 悠、 菅井きん、
日色ともゑ、 乙羽信子、 小澤塋太郎、 若林 豪、 山本 圭、
池部 良、 竹脇無我、 辻 萬長、 伊藤敏八、 倉田保昭
ストーリー
植村直己の大いなる冒険は23歳の時に始まった、植村の全財産は110ドル（4万円）、他にあるものといえば、若い精神と肉体、そして大きな夢だった。植村はこの放浪時代に、いかなる困難、苦労にもめげず、誠心誠意の体あたりで、やりたいことを次々に実現した。モンブラン、マッターホルン、レナナ峰（ケニア）、キリマンジャロ、アコンカグアを単独で登った。そしてアマゾン川 6000キロを筏で下ることまでやりとげた。1970年５月には、日本人として初めてエベレスト山頂に立った。そして３ケ月後には、北米最高峰マッキンリー単独登頂に成功。５大陸最高峰すべてを征服する記録を打ちたてた。
1978年3月5日、植村直己は51日間の苦難と死線をさまよう北極点単独行に出発した。恐らく２度と誰も成し得ないだろうといわれる世紀の大冒険である。
文明国の冒険家は、その資力にものを言わせて、エスキモーと犬橇を大量に従えて氷原に乗り出したのだが、それでも北極点に立つことは容易ではなかった。植村はそれを、たった一人で決行し成功したのだ。マイナス 50度を越える寒さとの戦い。白熊の襲撃。逃げたエスキモー犬。開氷面に包囲される恐怖。クレバスへの転落。食糧の欠乏。何日も孤立させる死のブリザード。１日５キロも進めない乱氷原そして数々の誤算。植村と犬が互いにはげまし合い、ともに戦って苦難の道程を進む様子は、まさに地獄絵図であった。
植村を語るに欠くことのできないのは、公子夫人との日々である。出会い、結婚、別れ別れの生活と束の間の逢う瀬、そして永遠の別れ。その中で、なにがつらいと言って、踏み込むことができない世界を持ち、それが夢であり、それしかないと言う男を夫にした妻の日々ほど痛切なものはない。だが、植村が世界のどこをどう捜したとて、公子夫人にまさる女性に出会うことはなかったろう。冒険者の妻は悲壮ではつとまらないのだ。公子夫人はこう日記に書いた。『植村の手記がある本に載っていた。“女房よ、おれのわがままを許せ”とは泣かせてくれます。冗談じゃありません。あなたのわがままを許していたら、堪忍袋が幾つあっても足りません。一緒になると決めた時から、あきらめているだけです』女からすれば稚気愛すべき男を大きな母性で包むしかない心境で、公子夫人はあの爽やかな微笑で植村を見守りつづけたのだった。
1978年4月29日に、植村直己は苦難の踏破を成功させた北極点に立ち、日本、カナダ、デンマークの国旗を立てた。そして、文字どおり生死を共にした傷だらけのエスキモー犬の一頭一頭を抱き、労をねぎらう言葉をかれた。犬たちにも植村の気持が通じている。心から嬉しげに尾を振ってくれた。植村は泣けて泣けてならなかった。あせり、怒り、絶望し、奮起し、そして成し遂げた前人未到の記録であった。
植村は、成功の直後にもう次の冒険に思いを馳せているのだった。植村の最後の目標は、彼の10年間の夢てせある南極だった。南極は植村にとって残された最後の大冒険になるはずだった。
1984年2月13日午前11時、マッキンリー冬期単独登頂に成功した、との交信を最後に植村の消息は断たれた。懸命の捜索にもかかわらず発見されず、絶望を認めないわけにもいかなくなった。
日本政府は、植村直己の輝かしい業績に対して、彼の死亡が確定的になった1984年4月19日に、「国民栄誉賞」を贈った。
映画パンフレットより
